2019/5/25の記録
しかしぼくの指導する100mの彼女は本当に厄介で、パラグアイ国内の人間としては本当に真面目で神経質(ぼくの足元にも及ばないけど(笑))。
— 大村康太@プロコーチ (@KotaOhmura) May 25, 2019
だから悪い意味で常識にカチカチになって、少しでも自分のリズムが崩れると競技に関して若干不安定になる。
大学生のときの自分を見ているようだ。
なんでぼくたちは練習するかって、それは向上することの他に制限や常識をブチ壊すため。
— 大村康太@プロコーチ (@KotaOhmura) May 25, 2019
常識とされているものの反対側を試してみてそれでよければ制限が取り払われて可能性が広がっていく。
だから一般的にダメと言われている常識が本当に自分に当てはまるのかを試さない限り、狭いままだよなぁ。
ぼくが指導している選手は完璧主義者です。
確かに彼女はドイツ系の選手なのでパラグアイの選手とは考え方や物事への取り組み方が違います。真面目です。
でもちょっと固いんですよね、考え方が。
ぼくから見た彼女は全然完璧主義者ではないけど、彼女がそう思っているということは彼女なりの線引きがあるのだと思います。
だから全然完璧でも何でもないんですよ。ぼくからしたら普通の選手。真面目な選手ではあるけど普通。気が狂うほど何かに没頭するようなタイプではないし、そのような没入性がないからそれを達成させるために完璧にやってやろうというのもないんですよね。だから普通、強いけど普通です。
ぼくは彼女にはもっと柔軟に陸上競技を楽しんでほしいです。
今回の南米大会でもそうでしたが、ホテルのご飯が自分が普段食べているものと違うとか、ウォーミングアップも普段通りにできなかったとか言うんです。完璧にできなかったからこういう結果になってしまった、という言い訳のように聞こえてしまいます。
厳しい言い方かもしれませんが、どんなに小さな大会でも、もちろん大きな大会もそうですが、参加者全員が同じ条件で戦います。ということはその条件でできるだけ自分のパフォーマンスを発揮できるように努力・準備することが大切。
100%完璧にやるって相当な覚悟がないと無理。なぜなら100%の準備ができる状況というのはほぼないからです。どんな試合でも必ずいい条件もあれば悪い条件もあります。その中でいかにできるか、自分の完璧ができないとしても本質的なところをしっかりと抑えて準備できるか、こういう柔軟性が大切なんです。だから完璧主義だと本当に苦労します。
ぼくも大学生のときは似たような完璧主義者でした。
いや、完璧主義者というよりも融通が効かない選手と言ったほうが正しいかもしれません。
当時のぼくは自分なりに考えてやっていたこともあって譲れないことが多すぎました。それが少しでも部活のあれこれによって変わるものなら途端に調子が悪くなりました。試合でも自分のやりたいことが100%できたときはいい記録が出ましたが、それは数試合。あとは環境の変化によって本来柔軟に対応しなければならなかった自分の習慣を変えることができなかったので、ずっとイライラしていた気がするし、そんな状態で記録も出るはずがありませんでした。
食べ物も1g単位で測って食事を摂っていた時もあったし飲み会にはほぼ出席しませんでした。出席しても酒は飲みませんでした。
でも面白くないんですよね。確かに競技者として栄養を気をつけたり回復するにはどうしたら一番いいかを考えて行動に移すことはとても大切なことです。でもそれが理論的にベストだとしても実際は違うことが多いんです。理論に縛られて自分自身に制限をかけてしまうと本来できることがどんどんなくなっていきます。面白くなくなっていくんです、陸上も、私生活も。
こんな自身の経験があるからこそ、彼女には柔軟に、というか0か100ではなく80点の出来でもいいということを知ってほしい。20点分ダメだったとしても80点分いいことができたならそれはプラスです。練習でもそう。99点分なにも手応えがなくても1点分目的を達成できたらそれは進歩なんです。0か100だと見えない世界があって、そんな見えない世界を生きていると途端に苦しくなってしまう。白か黒、グレーがないから。
栄養にめっちゃ細かいのにチョコをカウントしないあたりが、まぁ20歳だなと思った。あまちゃん。別に何食べてもさほど変わらないからいいんだけど。
— 大村康太@プロコーチ (@KotaOhmura) May 26, 2019
ちなみに自分のお土産も買ったって。ペルーオリジナルって感じじゃなさそうな普通のやつ。いつ使うんだろうか…(笑)
楽しんでるようで何より! pic.twitter.com/xUtAx0ZSr7
例えばこういうのとか。
南米大会の試合が終わったあとにスタバに行ったらしいんですよね。で頼んだのが写真に載っているフラペチーノ。生クリーム+チョコレートです。砂糖もてんこ盛り。でも食べた。
完璧主義者なら食べないですよね、普通。
要は自分の判断で「これはいい」「これはダメ」という線引きを厳しく決めすぎているということです。言い換えれば「都合が良すぎる」ということ。この都合の良さをもうちょっと柔軟な方に傾けることができたらどんなに陸上競技が楽しくなるか。それは練習だけじゃなくて選手間交流も含めての話。
選手には何度も話をしていますが、パフォーマンスを高めたいなら「バランス」はとても大切です。競技だけじゃなくて普通の生活が普通に楽しいと感じられるような生活。ルールばかりで生活の楽しみがなくなってしまう生活では練習と生活との間のメリハリが消えてしまいます。
バランスを失ってしまうと、例えば競技のことばかり考えてしまってうまくいっていないときはうまくいっていない理由ばかりを1日中考えるようになってしまいます。完璧主義者なのに一日中ネガティブになってしまうということです。本末転倒。
今回の大会では
- 普段通りのウォーミングアップができなかった
- 食事も普段通りではなかった
- 結果としてレースで足に違和感を覚えてしまった
というネガティブな側面ばかりに目がいっていたので、しばらくはネガティブな感情で練習することになると思います。特に足の痛みは普段から感じるものだから、思ったような練習ができない、完璧にできないとなるとストレスが溜まるはずです。これも身を持って覚えるしかありません。
世の中には完璧にやっていなくても自分より競技成績が優れた選手は山のようにいます。そのような選手を前にした時に「自分は今まで完璧にやってきたのにどうして勝てないんだ」と思ってしまったら、その先成長するのはとても難しい。時間がかなりかかると思います。完璧主義特有のメンタルに問題があるからです。
理論ではありません。競技の正解は結果を残した人の「プロセス」です。言ってしまえば非常識と言われている方法であってもそれで成果を上げれば正解なのです。競技者は手段で勝負しているのではありません。競技で勝負し、競技結果でプロセスが肯定されるのです。
理論は一般。でも各選手は一般・平均ではありません。それぞれが別々。だからこそ理論的に完璧に準備するのではなく、自分自身がこんな状態でもやれるというところを普段から探すことが大切なんです。
彼女はこれが足りない。理論は知っていても実際にそれ以外の方法を試そうとしない。
完璧であるかどうかは求める結果に到達した時に振り返ればいい。結果がプロセスを評価するなら目標としていた結果が出ればそのプロセスはどんなに非常識なことをやっていたとしても完璧であったということができます。
競技成績は順調に伸びていますが、これからさらに成長していくためにはもっと柔軟に、完璧ではなく今のトータルのベストを尽くせるようになってほしいです。

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