【前編】からの続き!

練習の成果をしっかり出して見事優勝することができた。
ぼくが教えている短距離の14歳の女の子が無事に優勝し、とりあえず練習の成果が出て一安心。
初めての大会だから彼女自身も記録の価値がよくわかっていなかったけど、とりあえず喜んでいる。
パラグアイの選手でも練習をすればちゃんと強くなる。
それを確認できただけでもぼくはよかった。
前々日に少し脚を痛めてしまった彼女。少し心配していたところもあったと思うけど、よく全力で走ってくれた。
見ていてすごく清々しかった。きもちよかった。
***
次は、昨年全国大会の80mで5位に入賞した男の子の400m。
普段は学校、仕事で練習に来ることができないから、実質ほとんど練習できていない。
(本当に仕事をしているのかは不明だけど、、、)
15歳なのに骨格も筋肉のつき方も一流選手を彷彿とさせる彼のポテンシャルは、練習すれば間違いなく半年で年代別のチャンピオンに簡単になれるし、簡単に100mを10秒台で走ることもできる。
そんな彼の初めての400m。
長い距離を走っているのを見たことがなかったのでどんなものなのかなと思っていた。
アップ。
のはずだったけど、アップをしない。
??という状態だったけど、とりあえず様子を見ていたらいきなりスパイクを履いて400mのスタート地点に向かった。
そう、彼はアップをしなかったのだ(笑)
心拍数も上がることがなく、そんな状態で闘争心もわくはずもない。
十分な心技体の準備ができていないから、まぁ100%の実力は出せないけど、まずは見てみよう。そうせざるを得なかった。
ちなみに彼は試合会場になぜかジーパンを履いてやってきた。ウォーミングアップには気を使わないけど、服には気を使うのだろう。
どうでもいい情報だけど、細い草の茎ををつまようじで歯の間のゴミを掃除するように扱うのが彼のチャームポイントだ。

小砂利で敷き詰められた走るのが難しい競技場。
号砲が鳴った。
4人の選手が一斉に飛び出した。
彼は外から2番目。一番アウトレーンは大人だから、ちょうど引っ張ってもらえる形になっていた。
リズムの取り方と走りがやっぱりセンスがある。ほれぼれする走り。
200m付近まで互角に走っていた。
迎えた250m。
急に動きが悪くなった。どうした?
アウトレーンの選手にどんどん離されていく。
追えるような体力も残っておらず、フォームはぐちゃぐちゃ、首も振ってゴールに向かうのが精一杯な状態。
「あぁ~止まる~」と心の中で泣くぼく。でも無事にヘロヘロになりながらもゴールした。
レースが終わってからしばらく経っても陣地に戻ってこないから、ゴール付近に迎えに行った。
彼の顔を見るとまずまず元気そうだ。
でもどこかおかしい。少し混乱しているように見える。
彼は言う。
「走ってる途中に足全部痛くなって、ゴールしたら痛すぎて動けなくなった!!何だあれは!!??」
そう。
彼は、人生で初めて「乳酸」とご対面したのだった!(笑)
年代別のトップクラスの選手だろ~、と思うものの、やっぱり400mの練習をしないと400mは走ることができない。
そんなことは当たり前だけど、この大会でなぜ彼が400mに出場したのかも不明だし、もう一つエントリーしていた200mを棄権したのも不明。
それでも今回の大会でも年代別で優勝することができた。

見事優勝!表彰式はなぜかジーパン。そしてサンダル(笑)
練習すれば絶対に速くなるし、この国のトップになれる素質を持っているけど、どうしても練習に来ることができない。
日本だと練習に来いと言えば行かないといけない雰囲気が部活動にあるけど、ぼくのクラブチームは基本的にフリーな感じだ。
強制ではないからどうしても陸上以外に何か楽しいことがあるとそっちに行ってしまうこともある。
まだ子どもだから、練習するより友だちとおしゃべりしたりサッカーしたりしたほうが楽しい。
選手育成とか普及とか、そういうことがぼくの活動だけど、6ヶ月活動して、育成・普及は難しいと思ってるし、別に熱心に取り組まなくてもいいのかなと思い始めている。
全員が全員、同じ気持ちで陸上競技に取り組んでいるわけでもないし、友だちがいるからとかただ単に走るのが楽しいからとか、いろんな目的がある。
それでいいのだと思う。
いくら才能があっても競技に対するモチベーションがそんなに高くなければそれはそれでしょうがないし、陸上競技が全てではない。
だから、才能あるない関わらず、単純に陸上競技を楽しんでもらえればそれでいいかなって。
そして、試合に出て勝つ中で「ちょっと本気で頑張ってみようかな!」と思ってもらえたほうが、ぼくから働きかけるよりずっと価値があるんじゃないかな。
自身の内的な変化ほど大きな成長はないと思ってるから。
***
大学を卒業してから強く思うことがある。
陸上なんて別にふざけてやってもいいし、目的なんてどうでもいい。
とにかく楽しいことが一番なんだって。
ぼくは大学生時代、とにかくお遊びで陸上競技をやっている仲間を見るのが大嫌いだった。
なんで真剣にやらないんだ?強くなりたくないのか?遊びながらやって器具占領して、一体何なんだ?いつもヘラヘラして、練習も与えられたメニューに疑いを持つことなくやって一体何になるんだ?
とにかくそんな感じで、
大学生時代のぼくにとっての陸上競技は「結果」が全ての陸上競技。
だからとにかく真剣じゃない人が嫌で。人としては嫌いじゃないけど競技者としてはとにかく嫌で。
こんな人たちとは到底一緒に頑張れない、だから一人で頑張ろう。そう思ってぼくは一人でやって、結果、パンクした。
真面目にやっているはずなのに理解者が極端に少なく、仲間と思える人も極端に少なく、とにかく楽しいことも辛いことも共有する相手がいなかった。
そして、ぼくの性格上、どうしても遠慮してしまって練習中に話をするのを基本的に躊躇。
だからパンクした。
当時のぼくは最低最悪。
好きな陸上がいつの間にか修行になり、楽しくもなく、そして壊れた。
こういうのを自業自得って言うし、きっと馬鹿なのだ。
今でも大学の陸上競技やり直したいもん。

目的なんてどうでもよくて、楽しいと思えることが何よりも現地の子どもたちにとって大切。
陸上競技の目的なんて人それぞれだし、どんな陸上競技があってもそれでいいのだと思う。
勝利至上主義が全てじゃない。
友達がいるから遊び半分でやるのもよし、練習終わりにうまいビールを飲みたいから走るのもよし。
もう、目的なんてなんでもいいと思ってる。
そんな自由な陸上競技を、任地の子どもたちは教えてくれる。
任地に来る前からぼくはもう陸上競技は遊びの延長だと思っていたけど、改めてこの自由な環境でやる陸上競技はおもしろい。
試合中にお菓子食べたりジュース飲んだり、消化のことを考えないでサンドイッチ食べまくったり。
そんなアホみたいなことやっている任地の子どもたちが今はかわいい。
昔のぼくだったら嫌悪感抱きまくりだった(笑)
***
400mを走った期待の星は、その後予定していた200mを棄権し、ただひたすらにサンドイッチとバナナを食べまくっていた。
かわいいじゃないか。
今年から彼も年代別の区分が上がって、全国大会では厳しい戦いになる。
でも、自由に楽しくやっていることが大きな武器になる。
ルールに縛られすぎてしまう陸上競技は楽しくない。ルールは人の自由な発想を抑え、人間本来の自由で潜在的に「こう動きたい!」という思いさえ制限してしまう。

別にふざけてもいいから楽しむ。それが意外と大切だったりする。
だから、最近思うんですよね。
試合中にお菓子を食べようがコーラを飲もうが、その影響すら感じないくらいの圧倒的な実力をつければいいんじゃないかなって。
だって何かを食べたり食べなかったりすることで、記録に大きく影響する技術が向上することはないから。
お菓子とかさ、そういう嗜好品ってやっぱり子どもたちには必要。
あれこれ制限して陸上競技一本集中って絶対に楽しくないし、楽しくない状態で心技体の「心」を整えることができないから。
嗜好品は心の栄養だし、それと上手く付き合いながら練習したって別にいいはず。
世間一般的に言われている「常識」にとらわれてやる陸上競技が任地の子どもたちにとってきついものであるなら、ぼくはそういう指導をしたくない。
ぼくはとにかく
- 走るのが楽しい
- 投げるのが楽しい
- 跳ぶのが楽しい
- 友だちと何かするのが楽しい
とにかく「楽しい」を感じてほしい。陸上競技を通して。
今回は砂利でのレースだったし初めての400m、初めての乳酸を体験して60秒という超ボロボロタイムだったけど、練習すれば全国大会で54秒切るくらいでは走れると思っている。
楽しく走ることで成長して、その成長からもっと陸上競技を好きになってほしい。
表彰式でも相変わらずマイペースでなんかジーパンだったけど、まぁその意味不明なところが最近かわいいよね(笑)
次の試合も楽しみましょう!

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