それでこの説明をしたあとに選手が「確かにボディビルダーは筋肉は大きいけど動けないもんね」と言ったんです。
あぁ、伝わってるわと思いました。そして、選手が今の説明を基に、身近なところから具体例を探し出せたことに感動しました。
最近、本当に選手の成長を感じる。
— 大村康太@パラグアイ🇵🇾 (@KotaOhmura) 2018年12月1日
4年間、なぜパラグアイ記録保持者が自己記録を更新できてこなかったのか。
その理由のひとつは、「トレーニングは体を鍛えるためだけのもの」という考え方があったからだと推測しています。
彼が出したパラグアイ記録は20歳のときに出した10秒44です。これは、日本の大学生のレベルで考えてもかなりレベルの高い記録です。
でもそれ以降一切伸びていない。
体だけの発達で競技力を伸ばすのには限界があります。
体だけの成長で世界と戦えるのであれば、みんな走らずにウエイトだけやって体を鍛えればいいだけです。
でも、実際は体を鍛えても競技力は向上しないからこそ、フィジカル以外のことを考えなければいけません。
それが陸上競技です。
ウエイトトレーニングやフィジカルトレーニングは一体何のためなのか。
その考えがパラグアイ記録保持者には抜けていました。
それは選手だけのせいではなく、そう指導してきた指導者にも責任があります。
知識はあっても本質を理解した指導ができてこなかった。だから選手が成長しなかった。
そう考えることができます。
ぼくは選手にウエイトトレーニングやフィジカルトレーニングは「体をコントロールする練習」と伝えています。
ある一定の負荷に対して力だけで運動を行うのではなく、より効率的な動作をするための体の使い方を学ぶことが大切です。
なぜなら、実際の競技も「自分が思った通りに体を動かす能力」が本質的に重要な能力だからです。
自分が思ったように動かすためには頭を使って、イメージして、考えと実際の動きをリンクさせる必要があります。
それを鍛えるのがウエイトトレーニングやフィジカルトレーニングです。
神経の発達の重要性を樹木を例に説明しました。
枝が神経、葉っぱが筋肉です。
ある一本の木があるとします。
その木の幹は同じ大きさですが、枝の本数が少ないです。
少ない枝で葉っぱはどれほどつくでしょうか?(神経が少ないと筋肉もつかない)
また少ない枝で大きな葉っぱができたら、枝は重さに耐えられず折れてしまう可能性もありますよね?(神経の少ない筋肉はコントロールが効かない)
パラグアイ記録保持者の筋肉は、まさしく「神経が発達していないけど筋肉だけが大きいボディビルダー」のようなものでした。
ボディビルダーが悪いのではなく、陸上競技選手がボディビルダーになっていたのが問題ということです。
重たいダンボールを運ぶときに腕一つと両腕だったらどちらが疲弊が少なく、かつ効率的に運ぶことができるでしょうか。
腕が神経だとしたら、同じおもりに対してだったら両腕の方が疲弊しにくいしコントロールも効きます。
要はそういうことです。
陸上競技も同じです。
そんな話をしたら、選手が納得してくれました。
陸上競技は筋肉を誇示するスポーツではありません。
陸上競技は速く走る、遠くに跳ぶ、投げる、そんなスポーツです。
これが何のためにトレーニングをするのかにつながってくるのですが、選手は少しずつ、「なぜこのトレーニングをするのか」という目的を見出すことができつつあります。

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